ドラッグストアに行くと、風邪薬や解熱鎮痛薬など、処方箋なしで購入できる医薬品が並んでいます。こうした商品はかつて「市販薬」とか「大衆薬」と呼ばれていましたが、近年になって「OTC(Over The Counter)医薬品」の呼称が定着してきました。
これに対し、薬剤師が医療機関で作成した処方箋をもとに調剤する薬を「医療用医薬品」といいます。患者側に医療用医薬品の選択権はないものの、医療の専門家が本人の体質や症状に合わせて処方するため、指示を守って使用する限り、大きな事故が起きる恐れはありません。
OTC医薬品の場合、服用するかどうか、どの商品を選ぶのかといった判断は患者本人に委ねられています。しかし薬学に知識のない一般の消費者にしてみれば、効果的で安心して服用できる医薬品を見つけるのは簡単でないかもしれません。そうした際、薬の専門家としてドラッグストアで相談に応じてくれるのが、薬剤師や医薬品登録販売者(以下、登録販売者)です。
対応可能な医薬品の範囲が異なる薬剤師と登録販売者
OTC医薬品の種類は、大まかに「要指導医薬品」と「一般用医薬品」に分けられます。要指導医薬品とは、医療用医薬品から市販品に転用されて3年に満たない薬のことを指します。その3年の期間内に問題がないと判断されれば、基本的に一般用医薬品へと移行する仕組みです。
さらに一般用医薬品には3種類の区分があり、相互作用や副作用での注意の度合いの高い順から、「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」となっています。
薬剤師は医療用医薬品を含むあらゆる薬を扱う国家資格なので、OTC医薬品も全種類に対応可能です。それに対し登録販売者が取り扱えるのは、第2類医薬品と第3類医薬品に限定されます。
また要指導医薬品と第1類医薬品は、レジ後方の商品棚などドラッグストア内でも来店者の手に届きにくい場所に配置する決まりになっています。薬剤師には相談に応じる義務や書面による情報提供も課せられており、不在時には販売できません。
第2類医薬品と第3類医薬品は、来店者が自由に手に取れる場所に並んでいます。情報提供に関しては、第2類医薬品では努力義務にとどまり、第3類医薬品については特に法律上の規定はありません。同じ一般用医薬品でも、第1類医薬品と比べて制約が少ないようですが、それでも薬剤師や登録販売者は、顧客から相談を受けたときには応じる必要があります。
薬剤師、登録販売者の見分け方と相談内容の具体例
ドラッグストアや薬局では、一般のスタッフとの見分けがつくように、薬剤師や登録販売者は勤務中、職名を表示した名札を付けています。OTC医薬品の相談に乗って欲しいときは、まずスタッフの名札を確認してください。また商品パッケージに記されている医薬品の区分もチェックしておきましょう。
顧客からは、例えば次のような相談が想定されます。
「自分に合う薬を探している」
「説明書の記述でわからない点がある」
「アレルギーや副作用のリスクが心配だ」
「ほかの医薬品やサプリメントとの併用になるが、飲み合わせは大丈夫か?」
「妊婦(または授乳中)でも利用できる薬はあるか?」
「これまでに何度も同じ症状に悩まされているので、予防法を教えて欲しい」
薬剤師や登録販売者は、服用方法や注意すべきトラブルなど必要な助言をすると同時に、状況によっては医療機関への受診を促すこともあります。
まとめ
OTC医薬品の効き目は、医療用医薬品と比べて概して緩やかとされていますが、それでも副作用などトラブルのリスクはゼロではありません。
店内に日用品や加工食品なども多数取りそろえるドラッグストアは、手軽に利用しやすい印象があります。それでも医薬品を買う場合は、安心して服用できる製品を選び、健康維持に役立てたいものです。気になることがあれば、遠慮なく薬剤師や登録販売者に相談し、疑問点を解消しておきましょう。